自己破産と口座凍結
お金のことで悩みを抱えている人の中には、「もう借金を返せない」と感じている人もいるかもしれません。そんなときに選択肢のひとつになるのが「自己破産」という制度です。自己破産をすることで、重い借金の負担から解放されることもありますが、それにともなって銀行の口座が使えなくなる「口座凍結」という問題が起こることもあります。
この記事では、「自己破産」と「口座凍結」について、専門的な言葉をできるだけ使わず、分かりやすく説明します。
自己破産とは?
自己破産とは、借金をどうがんばっても返せない人が、裁判所に申し立てをして、その借金をゼロにしてもらう制度です。これを利用することで、借金から解放され、新しく生活を立て直すことができるようになります。
ただし、「なんでもかんでもチャラになる」わけではありません。裁判所がきちんと内容を調べて、「この人はまじめに返そうとしていたけど、どうしても返せない状態だ」と認めた場合に限り、借金の免除が許されます。
また、自己破産をすると、自分が持っている財産の一部は手放す必要があります。たとえば、高価なものや多額の貯金、マイホーム、車などはお金にかえて、借金の返済にまわされることがあります。ただし、生活に必要な最低限のもの(衣服、家具、家電、一定額の現金など)は手元に残すことが認められています。
自己破産の流れ
自己破産をするには、まず必要な書類をそろえて、裁判所に申し立てをします。その書類には、収入や支出、借金の額や理由、自分が持っているものの情報などを正直に書きます。
裁判所がその内容を確認したあと、実際に借金をゼロにしてもよいかどうかを判断します。状況によっては、「破産管財人」という第三者がついて、財産の整理や調査を行うこともあります。
この手続きが終わって、裁判所が「借金を免除してよい」と決めれば、借金から解放されます。そして、そこから再スタートの生活が始まるのです。
口座凍結とは?
自己破産の申し立てをすると、それに関連して「口座が凍結される」ことがあります。凍結とは、その口座からお金を引き出したり、振り込んだりすることが一時的にできなくなる状態のことです。たとえば、ATMでお金をおろそうとしても「ご利用いただけません」と表示されてしまいます。
これは、財産の動きを止めて、裁判所や関係者が正確に調査できるようにするためです。また、借金をしている銀行が「この人は自己破産するから、口座にあるお金を確保しよう」として凍結することもあります。
どんな口座が凍結されるのか?
口座凍結といっても、すべての銀行や支店の口座が一律で止められるわけではありません。凍結されやすいのは、主に以下のような口座です。
- 借金している銀行の口座
もっとも凍結されやすいのは、ローンやクレジットカードなどで借金をしている銀行の口座です。たとえば、三菱UFJ銀行からカードローンを借りている場合、その銀行の○○支店の口座が凍結される可能性があります。
銀行側としては、口座にお金が入っていれば、それを返済にあてたいと考えるため、先に口座を止めることがあるのです。 - クレジットカードやローンに使っていた銀行の口座
みずほ銀行や楽天銀行など、カードの引き落としに使っていた口座も対象になりやすいです。特に、破産の情報がその銀行に伝わった時点で、凍結の判断をされるケースがあります。 - 同じ銀行の他の支店の口座
「借金しているのはA支店だけだから、B支店の口座は大丈夫」と思っても、実際は同じ銀行の中ではすべての口座がつながっているため、他の支店の口座も凍結の対象になることがあります。 - 生活用の口座
借金をしていない銀行の口座であっても、自己破産の調査のために一時的に凍結されることもあります。たとえば、給与振込に使っている口座や生活費を管理している口座でも、破産管財人が調査のために一時的に動きを止めることがあります。
ただし、そういった生活に必要なお金は、事情を説明すれば引き出せるように対応してもらえることもあります。
凍結されたらどうする?
もし口座が凍結されたら、まずはその銀行に問い合わせて、理由を確認しましょう。また、自己破産の手続きをサポートしてくれる弁護士などに相談すれば、今後どうすればよいかをアドバイスしてもらえます。
生活費や給料が入っている口座が止められると、とても困ってしまうこともあるので、自己破産を考える前に、口座の整理や準備をしておくのもひとつの方法です。
自己破産後の生活はどうなる?
自己破産をすると、しばらくの間は新しくクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりすることができなくなります。信用情報に「事故情報」として記録されるため、5年~10年ほどはお金を借りることがむずかしくなります。
また、保証人がついている借金がある場合は、その人に支払いの義務が移るため、迷惑をかけてしまうこともあります。
しかし、自己破産はあくまで「人生をやり直すための制度」です。無理な借金返済を続けて生活が壊れてしまう前に、法律の力を借りて一度リセットする。それによって、多くの人が再スタートを切っています。
まとめ
自己破産は、借金を返せなくなった人のための救済制度で、裁判所を通じて借金をゼロにすることができます。ただし、手続きの途中で銀行口座が凍結されることがあり、特に借金のある銀行やその支店の口座は注意が必要です。
口座の凍結は一時的なものですが、生活に影響が出ることもあるため、事前に準備したり、専門家に相談したりすることが大切です。
一人で悩まずに、信頼できる相談相手と一緒に、新たなスタートを考えていきましょう。